大覚寺のご紹介

人生を健やかに生きていくための説法を
毎月、御紹介していきたいと思います。

2009年(平成21年)5月のミニミニ法話・お説教

2009年(平成21年)5月

玄禮和尚のお説法

2009年(平成21年)5月

~ 第014回 「母の日に思う」 ~

 母の日が来ると、子供のころの遠足の日を思い出しますね。
遠足の前の夜は、いつも決まってなかなか眠れませんでした。
なんども寝返りを打って、そのたびに目を開けると、母もまた、いつも決まって縫い物をしていました。

 翌朝、まだ暗いうちに起きると、母親はもう台所でコトコトと音をたてていました。
家中で誰よりも遅く寝て、誰よりも早く起きるのが母親でした。母親が眠っている姿を、まず見たことがありません。
一日の大半は台所で立ち働いて、あとは掃除と洗濯、檀家の人との応対。そして夜なべの針仕事・・・・。

 戦後、世間一般に貧しかったせいもあるけれど、母親は子供の食べ残しで食事をすませることも多かったように思います。おや、お宅もそうでしたか。

 そんな母親に一度でもいいから、心から感謝の言葉をいったことがありますか?
昭和24年に日本でもアメリカにならって5月の第二日曜を「母の日」としたのですが、学校でもらった赤いカーネーションを、母親に手渡しても、「ありがと う」の言葉は照れくさくて言えませんでした。

 その母親も30年前に、父親の後を追うように他界しましたが、鏡を見ると、自分が親にそっくりだと発見して、ハッとする瞬間があります。

 写しみる鏡に親のなつかしき わが影ながら形見とおもえばまさにこの歌の通りです。
でも、「母親が自分の中にいる」 そう感じるのは、ほんのり心和むことではあります。

「母の日」になにかをプレゼントすることも大切ですが、すでにこの世にいない母親には、まず母を想い、感謝することが大事なのです。

 先日もテレビで一人の女の子が言っていました。
「母さん、働きすぎて体をこわさないでね!]
働く母親にとって、これに勝る贈り物はありませんね。
 
 一切の善男子・善女人、父に慈恩あり、母に悲恩あり。この因縁をもってのゆえに悲母の子を念うこと、世間に類いあることなく、その恩未形(みぎょう)に 及べり。
 
 父母恩重経の一節です。母の恩は、生まれる以前(未形)から私に及んでいるのです。
 
 
 
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