大覚寺のご紹介

人生を健やかに生きていくための説法を
毎月、御紹介していきたいと思います。

2014年(平成26年)3月のミニミニ法話・お説教

2014年(平成26年)3月

玄禮和尚のお説法

2014年(平成26年)3月

~ 第072回 「雛まつり」 ~

 銀閣寺の前に白沙村荘という橋本関雪翁の別荘があります。関雪忌に招かれて記念に立ち雛の色紙絵を頂戴しました。

 この立ち雛の絵を見ながら、思い出したことがあります。渡辺一枝さんは人形作家であり、エッセイストでもあります。若いころは保育士でした。

その頃、最初のお雛さまを蛤の貝殻で作りました。もちろん結婚前でしたが、いつ生まれるかわからない未来の娘のために作ったのです。

貝殻の内側を薄いピンクの絵の具で塗って、紙を切り抜いた小さな人形を立てました。素朴なお雛さまです。その時、一枝さんは思いました。

 「子どものお節句は私の手作り人形で祝ってあげよう。将来、いつか来るその日の為に、毎年お雛さまを作っていこう。」

紙コップ、石鹸箱、調味料入れ、徳利、糸巻き、お手玉、石ころなど、材料はどれも身近なものばかりです。

作家の椎名誠さんと結婚し、娘が生まれてからは、いつか来る日のためではなくて、現に腕に抱いている娘の為にお雛さまを作りました。どれもつつましく素朴 なお雛さまばかりです。

でも、心を込めて作ったといわれます。その小さな愛嬌あるお雛さまは、桃の節句にそそぐ早春の柔らかい日射しにも似て、とても美しく可愛いのです。

 今、一枝さんは東日本大震災で被害を受けた南相馬地域に赴き、仮設住宅の女性たちに人形の作り方を指導しています。

端切れで作ったフクロウのストラップや、くま・うさぎ・さる、などの動物のぬいぐるみを作って、義捐金や品物などで支援してもらった人に、お返しとして 送っている、とブログで述べています。

 仏教に「四無量心」という教えがあります。

① 慈無量心・・縁のある人々に深い友情の心を起こす
② 悲無量心・・人々の苦しみに同悲の心を起こす
③ 喜無量心・・人々の幸せを共に喜ぶ心を起こす
④ 捨無量心・・わが身の利益に執着する心を捨てる

渡辺一枝さんの行動は、まさしく四無量心の実践です。「悲しみは、二人で分けると半分になる。喜びは、二人で分けると二倍になる」という教えがあります。

喜びを人に分かち与えてこそ、自分の幸せも大きくなるのです。

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